犬の血管肉腫|豊橋市の動物病院「セピどうぶつ病院」

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症例紹介

犬の血管肉腫

  • 未分類
  • 腫瘍

犬の血管肉腫

〈概要〉血管肉腫は、血管内皮を由来とする悪性腫瘍であり全身どこにでも発生する可能性のある腫瘍です。
一般的には脾臓の血管肉腫が多く、肝臓、心臓、皮膚や皮下、骨、その他多くの臓器での発生が報告されています。

いずれの部位に発生するにしろ、悪性である事に変わりはなく、非常に転移しやすい腫瘍として報告されています。

〈部位別にみた血管肉腫〉

・脾臓

脾臓に出来る腫瘤に関しては、50%が悪性腫瘍と言われておりそのうちの50%が血管肉腫であるとされています。症状を示さず健康診断などにより偶発的に見つかった場合は70%が良性腫瘍であったとの報告もありますが、腹腔内出血を呈する脾臓腫瘍では70%が悪性と言われています。血管肉腫は血液に富み、容易に出血することからしばしば腹腔内出血によるショックや貧血によって命に係わる状態で来院することも多く、その場合は緊急手術による腫瘍の摘出や輸血の処置が必要になることもあります。

脾臓に発生した血管肉腫

 

腹腔内出血を起こしていた症例

 

・心臓

心臓に出来る血管肉腫は、その多くが心臓の右心房、右心耳に発生します。心臓に出来た腫瘍では、切除や細胞診などが難しく、治療前に確定診断をつけることが困難である場合もしばしばあります。右心房および右心耳に発生する腫瘍の50~70%が血管肉腫であるとされることから、診断が困難な症例では血管肉腫の可能性が高い、という状態で治療を始めることもあります。脾臓同様出血することも多く、心ンポナーデ(心臓と心膜の間に血液などの液体が貯留し心臓が上手く動けなくなってしまう状態)を起こしている場合は、心膜穿刺(超音波下で針を刺し、血液を抜去する処置)が必要になります。

心臓の血管肉腫が歌枯れた症例。丸の部分が腫瘍

・皮膚・皮下

皮膚に発生する血管肉腫に関しては、腹部に数ミリから1cm程の血種のような赤紫色の腫瘤として認められることが多く、紫外線への暴露が一因になっている事が分かっています。
皮膚に発生する血管肉腫は比較的悪性度が低いといわれていますが、皮下に発生する血管肉腫は他の部位に発生した血管肉腫同様転移しやすいとされています。

〈診断〉

針生検が可能な場合な部位では、細胞診により診断後、適切に切除する事が望ましいですが、腹腔内に発生した腫瘍では針生検により腹腔内出血を起こすリスクが高く、血管肉腫が疑わしい症例では針生検は行わず、摘出後の病理組織診断により確定診断を得られる事が多いです。

〈治療〉

外科手術が可能な場合は外科手術を第一選択とします。しかしながら、すでに転移を起こしている場合や心臓に発生するものなど摘出が困難である場合、また摘出出来たとしても転移を非常に起こしやすい腫瘍のため、多くの場合化学療法などの内科治療が必要となります。脾臓の血管肉腫においては、脾臓摘出のみで平均生存期間中央値が約1~2か月、脾臓摘出+化学療法を実施した場合は約6ヵ月と報告されており、術後の化学療法は有効であることが分かっています。心臓に発生した血管肉腫においても、化学療法を行った場合、実施しなかった場合では、化学療法を実施した方が優位に生存期間が延長することが報告されています。現在効果が認められている抗がん薬のプロトコルには、ドキソルビシンをベースとしたものや、メトロノミック療法(低用量の抗がん薬を頻繁に投与していく方法)などがあります。しかしながら、化学療法を実施しても1年生存率は10%未満と予後は非常に厳しい腫瘍であるため、可能な限りの早期発見、摘出が望まれます。

 

 

皮膚、皮下などに発生する腫瘍などは、日ごろ触ったりなでたりすることで、比較的小さい腫瘍のうちに発見できることもありますが、腹腔内や胸腔内に発生した腫瘍などは早期発見が難しいため、定期的な健康診断などを行うことが大切となります。

 

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