犬の乳腺腫瘍|豊橋市の動物病院「セピどうぶつ病院」

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症例紹介

犬の乳腺腫瘍

  • 腫瘍

犬の乳腺腫瘍

 

〈犬の乳腺腫瘍とは〉

乳腺組織由来の腫瘍であり良性のものを乳腺腺腫、悪性ものを乳腺癌と呼びます。

平均発症年齢は8~11歳であり、良性と悪性の割合は約50%ずつといわれています。

(未避妊の小型犬に関しては、やや良性の可能性が高いとされています)

早期に避妊手術をすることで発生を予防出来るとされており、その予防効果は、初回発情前では発生率が0.05%、

2回目の発情前では8%、3回目の発情前では26%、それ以降は未避妊の犬と比べ発生率は変わりなしとされています。

複数の乳腺に発生する事も多く、それぞれが同一のものでなく、1つが悪性、1つが良性という事もあります。転移しやすい組織としては肺が多く、すでに転移を起こしてしまっている場合は手術が出来ないこともあります。

下腹部に発生した大きな乳腺腫瘍

 

 

 

乳腺癌の肺転移が疑われた症例

 

〈診断〉

針生検を行うことで、発生部位と合わせおおよそ診断がつく事が多いのですが、はっきりと良性と悪性の診断をつけることは難しく最終的な診断は手術後の病理組織検査になります。

腫瘍の大きくなるスピードが速いものや、表面が潰瘍化しているもの(自壊)は悪性度が高いものの可能性が高くなります。

 

〈治療〉

外科切除

良性のものや、悪性でも早期であったり比較的転移しにくい腫瘍であった場合などは、

切除手術で根治が可能になるため。なるべく早い段階での手術が望まれます。

手術の方法としては、切除する乳腺の範囲によって異なります。

・核手術…腫瘍のみを切除する方法です。おもに良性を疑う小さい腫瘍(0.5cm未満)に実施します。メリットとしては傷口が小さいため動物への負担が小さいことですが、悪性腫瘍であった場合は腫瘍が取り切れない可能性もあります。

・単一乳腺切除術…腫瘍の出来た乳腺のみを腫瘍と一緒に切除する方法

1cm程の比較的まだ小さいしこりの切除に用います。核手術と比べてやや切除範囲は広くなることで腫瘍の取り残す可能性を減らすことができます。

悪性度が高い腫瘍の場合では、同一の乳腺領域に腫瘍が残存する可能性があります。

・領域乳腺切除術…血管やリンパの領域の乳腺を一括切除する方法です。

通常犬の乳腺は左右5対ずつあり、発生部位によって第1~3乳腺か、第3~5乳腺を一括で切除します。領域内に複数の腫瘍がある場合や比較的大きい腫瘍が出来ている場合などで実施します。

メリットは、同じ領域の乳腺を一括で切除するため腫瘍が残存する可能性をなるべく防ぐことが出来ること、また第3~5乳腺の切除では一緒に鼠経リンパ節も切除出来るため、リンパ節転移の診断も同時に出来ることなどがありますが、デメリットとしてはやや傷が大きくなることや、第3乳腺に発生した腫瘍の場合は上下どちらかの乳腺の領域切除を実施しでも、残りの領域に腫瘍細胞が残る可能性があることなどがあげられます。

・片側乳腺全切除術…片側の第1~5乳腺すべてを切除する方法になります。悪性度が高いことが予測される場合や複数の腫瘍が広く存在する場合などに実施されます。

かなり大きい傷になるため、手術侵襲が大きくなったり、死腔が出来てしまうことで術部に漿液が溜まってしまう可能性がありますが、残存する腫瘍を残す可能性はかなり低くなります。

・両側乳腺全切除術…すべての乳腺を切除する方法です。左右にまたがり複数の腫瘍がある場合などに行います。一気に切除すると、合併症を引き起こす可能性が高いため、通常は片方ずつを数週間の間隔をあけて2回に分けて切除します。

 

・子宮卵巣摘出術…未避妊の場合には、同時に子宮卵巣摘出術を実施する場合があります。

腫瘍の再発率(主に良性腫瘍)を低下させる効果があることや、子宮や卵巣の疾患の予防につながることから同時に実施することも多いです。

 

化学療法

手術後の病理組織診断で、悪性度が高く転移の可能性がある(リンパ管浸潤や血管内浸潤)場合や、手術前の検査にて転移を起こしている可能性がある場合などに検討されます。

しかしながら、抗がん剤がとても効果的な腫瘍ではないため、手術で取り切ることがかなり重要となります。

 

〈手術をしてはいけない乳がんとは?〉

炎症性乳がんといい、悪性度が極めて高く、皮膚の微小なリンパ管の中に腫瘍細胞がびっしりと入り込んでいる事が特徴である腫瘍です。皮膚の浮腫や熱感、硬結感や痛みを伴う乳腺病変として認められ、診断時にすでに転移している事が多いことや、術後傷が治りにくかったりすぐに再発してしまう事も多いため手術をするべきではない場合の方が多くなります。残念ながら根治できる可能性はかなり低く治療のゴールはあくまでも疼痛の解消が中心です。

 

〈その他の治療〉

乳腺腫瘍があっても年齢やその他患っている病気により麻酔をかける事が難しい子もいます。手術が出来ず腫瘍が大きくなってきた際、自壊といって腫瘍表面が出血や感染を起こしてしまう事があり痛みや臭いなどにより生活の質が低下してしまう事があります。

その際、腫瘍をなくす事は出来ませんが、出血や感染を抑える治療もあります。

 

乳腺腫瘍は早期に発見し、適切に切除することが出来れば完治出来る事が多い腫瘍です。

日ごろおうちの子をよく触ってもらいしこりを見つけたら早めに受診してもらう事が大切です。

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